Shimokitazawa

2010.05.25

TICA 「Johnny Cliche」発売記念インタビュー*前編




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TICA 「Johnny Cliche」6年ぶりとなる待望の New Album 

発売記念インタビュー:前編
  2009.11.12 interview by lete (aki machino)



Grand Gallery より誕生した新レーベルTartownより第一弾として発売された

New Album「Johnny Cliche」


TICA 石井マサユキと武田カオリの二人が、結成から9年の時を経て

積み重ねて得た類稀な技術と才能が、静かに美しく花開いている。

研ぎすまされた音はシンプルさを追求しつつも、柔らかな温もりを感じさせてくれる。

じんわりと染み渡るように心に深く響いてくる、隠れた宝石のようなアルバム。



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photo by hisao mashida




TICA:プロフィール

武田カオリ(Vo.)と石井マサユキ(Produce,All Inst.)によるグループとして活動開始。

2000年5月、カヴァー集『No Coast』でデビュー。収録曲『Rock The Casbah』

とそのSmith&Mightyによるリミックス・トラックが国内外で評価される。

2001年にはオリジナル・フルアルバム『Weight-Less』、Cafe Apress

-midiでのライブを同カフェのオーナーでもある橋本徹氏監修によりリリース。

以降オリジナル、カヴァー等、合わせて7枚のアルバムを発表している。

最新アルバムは2009年10月に発売された。カヴァーを中心とした10曲入りの

アルバム「Johnny Cliche」。The velvet underground “New York Telephone

Conversation” “Femme Fatal” 、The pritenders “2000Miles” 、The sugarcubes

“Birthday”等をticaならではの心地良い空間的なサウンドに仕上げている。最近では、

武田は Mood Makers のフィーチュアリングボーカリストとしての活動や、ゆら

ゆら帝国など様々なプロジェクトにシンガーとして参加。石井は Natural Calamity の森

俊二と2人で Gabby & Lopez を結成して2枚のアルバムを発表。また CHEMISTRYや

GONTITI 、ハナレグミなど多くのアーティストにギタリスト、プロデュース等で参加。

http://mining-for-gold.com/



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「Johnny Cliche」発売まで




lete:まずはニューアルバム「Johnny Cliche」の発売おめでとうございます。時を超えて

長く聴き続けたいと思うようなとても素晴らしいアルバムだと思います。


Tica:ありがとうございます。


lete:前作にあたる4枚目の「MINING FOR GORLD」の完成からは、約6年と間が空き

ましたが、その間お二人はどのようにお過ごしでしたか?


武田:私は子供が出来たので、ほぼ主婦業ですね。それ以外はぽつぽつと誰かの作品に参

加させていただいたりして主に主婦業をやっていました。


lete:Johnny Clicheの制作はいつ頃から始められましたか?


武田:曲は、随分前からありましたよね。


石井:曲はね、全部2004年に書いた。


lete:このライブアルバム(LIVE 02JUL2005)にも入っている曲ですよね?


武田:そうですね、だから何度も何度もライブでは演奏していたんですけれど。


lete:今回アルバムを作るきっかけというのはあったのですか?


石井:きっかけをくれたのはレーベルですね。


lete:作られて自分たちのものになっていた曲をアルバムにしたと?


武田:そうですね。うん。




二人の創造性 《顔のある音楽》 




lete:タイトルにもなっています1曲目のJohnny Cliche、2曲目のSunday Afternoon、

3曲目のRoom105は、Manuel Bienvenuの作詞で曲が石井さんですが、どういったプロ

セスで作られたのですか?


石井:うーん、詩先。マニュが最初に詩だけ書いてきて、それに曲をつけるというやり方

で全部作ったかな。


lete:今回のアルバムでは、この3曲と8曲目のOne Hundred Loveを加えた4曲がオリ

ジナルですが、どのようなイメージで作曲されたのですか?


石井:そうですね、太くて短い曲というイメージですね。他には、多くの要素が同時多発

的に起きながらもうるさくならないようなだとか、ゴチャゴチャした印象を与えずそれで

いて濃密な空間を感じさせるだとか。尺はなるべく短く、一筆書きのように一気に駆け抜

けるようにする。と言ったところでしょうか。


lete:普段作曲というのは作りたい曲があってで、作られている?


石井:基本的にはそうですよね。でも偶然みたいな事もあります。


lete:お部屋で楽器や機材に囲まれて作る事が多い?


石井:そうですね、曲は作ろうとして作る事の方が圧倒的に多いです。


lete:その際に誰が歌うっていうのは、考えてたりするのですか?


石井:TICAの場合には武田が歌うというのが前提としてあるでしょうね。


lete:Sunday Afternoonは2005年に発売されたライブアルバムと比べて、武田さん

の歌い方がかなり変わった印象ですが


武田:このライブアルバムのSunday afternoonの歌って結構良くて、それはそれで好き

だったんですけど、今回はね、石井さんからのリクエストも相当多かったんです(笑)歌

入れは全体的にかなり時間がかかりました。


lete:どのようなリクエストでしたか?


武田:どんなリクエストだったかな?そんなに抑揚をつける感じじゃなくて、もっとオケ

に添うようなというか。自分で弾き語りをして歌っている位の感じかな?でもそれが凄く

難しくて、期限を過ぎてもまだ歌入れ終わらなくて、途中でかなり嫌になって、ははは。

あまりにも長く歌ってたからわからなくなっちゃって、ホントのギリギリになってやっと

納得いく歌が歌えたかなという感じですかね。


lete:(石井氏に向かって)その辺はこう、考えていたものとちょっと違うなという?


石井:うーん。そうだったのかなぁ?


lete:武田ならばもっとできるだろうみたいな?そんな?


武田:父さん厳しいですから(笑)


lete:それでなのかもしれないですけど、より素直に真っすぐに歌っていらっしゃるよう

な印象が


武田:そうですね、うん。まさにそうだと思います。


lete:あとデビューの頃よりも高音のハリが聴いていて凄く気持ちいいなと思いました

が、その辺りは?


武田:高音のハリはそんなに意識していないですね。でもデビューの時よりも曲のキーが

高くなっているというのはあります。


lete:ああ、曲自体の。


武田:そうですね。


lete:Room105では、石井さんがリードボーカルをとられていますが、また歌いたいと

いう思いがでてきたのですか?


石井:別にまた歌いたくなってとかではないですけど、2004年位にエイベックスのコ

ンピレーションにソロアーティスト名義で参加する事があって、その時作った曲です。そ

れで、一応ソロ名義で参加したから自分で歌ったという。作詞がマニュで曲を自分で作り

ました。そういう機会があって、これも折角だからTICAとして入れようかなって。


lete:アレンジを変えたりされたのですか?


石井:いや、基本的には2004年にレコーディングした当時とほとんど同じですけど、

今回ギターをちょっと足したり多少変えましたね。変えたと言うかアドしたというか。


lete:TICAの曲の中ではめずらしい程に感情を濃く感じる曲で印象に残りましたが‥


石井:え?Room105?


lete:はい、なんかこう男らしい感じのロマンティックな曲だなと思って。何か特別なイ

メージがあったのですか?


石井:ロマンティックでも何でもいいんだけど、常にエモーショナルな方がいいとは思っ

ているんです。あの曲だけ特別そうしようとしてやった訳じゃなくて、基本は常に、エ

モーショナルな音楽がいいと思っているんです。

あと武田の歌声はね、要するに、昔のはこうなりたいっていう憧れの部分をどう真似する

かみたいなのがあって‥で、10年やってきてもうそろそろ自分の声持ったら?と。武

田って誰なの?っていう事が、もうわかってこないと面白くないじゃないですか。


lete:聞いてる方としては心に残るというか


石井:そうですね、顔のある音楽というか。それを「エモーショナルな音楽」という言い

方をしてもいいのですが。


lete:本物のTICAと言ったら何ですけど、それに辿り着く迄の道筋ですね。


石井:アーティストはみんなそうなんじゃないですか?TICAがと言うんじゃなくて。


lete:Room105はそのエモーショナルな音楽が、印象に残ったんでしょうね。


石井:あの曲だけ特殊にどうしたという事はないけど、でも2004年にJohnny Cliche

やRoom105だとか作り出した年から、はっきり気分が変わったというのは確かにありま

す。




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創られたTICAから創るTICAへ




lete:切り替えの年だったと?

石井:全部ではないですが、それまではレーベル側から今度こういうのを作りましょうと

お題がある場合もあって、それにトライするという部分もありました。


lete:仕事としてという


石井:うん、仕事として。


武田:そうでしたね、やっぱり。


石井:でもそれが、2004年位から完全にそうじゃなくなってたというのは一つのきっ

かけですよね。


lete:わかりました。ありがとうございます。




弾き語りのように歌うのが難しかった




lete:では次に、One Hundred Loveは、オリエンタルな香りが漂うムードのある曲で、武

田さんが作詞されていますが、どのように詞を書かれたのですか?


武田:そうですね、これは最初に曲があって。なので歌いたい事というよりは、その曲に

乗っかり易い詞と、、最初に「if you give me a」というのがあって、そこから合うよう

な歌詞を広げていった感じなので。


lete:詩のストックはしておく方ですか?


武田:そんなにたくさんは無いですけど、アイデアは幾つかあります。


lete:アイデアがあるのですか、楽しみですね。次にカバー曲になる5曲目のEdelweissで

すが、こちらの選曲は?


武田:石井さんです。


lete:なぜこの曲を選ばれたのですか?


石井:Edelwiess。うーん。理由はサウンド・オブ・ミュージックという映画が好きだっ

たから。


lete:そうでしたか。アレンジはすぐにできたのでしょうか?


石井:Edelwiessはソロギターでアレンジしてみたら結構弾けると思って。それで面白い

からどんどん追求していって、一曲ちゃんと弾けるようにして、ついでに武田に歌っても

らってライブでやる事にしようかなと。


lete:ああ、そうでしたか。武田さんははこの曲を歌うのは始めてですか?


武田:違うと思います。学校で日本語版が教科書に載ってるから。あんまり覚えてないで

すけど。


lete:初めての曲はどの位練習するのですか?


武田:初めての曲ですか。家でどの位するかな?曲にもよりますけど、多分今までのアル

バムの中で(Johnny Clicheが)、一番練習したと思います。


lete:本当ですか。ご苦労が?


武田:そんな苦労っていう気はしなかったですけど、そうですね、、気が付いたら。


lete:何か難しい曲があったのですか?


武田:やっぱりJohnny Clicheですね。


lete:ちなみにどんなところが?


武田:石井さんのオケに乗れないというか(笑)難しかったんですよ。もともと曲が難し

いなと思ってたんです。多分石井さんが弾き語りで自分で歌ったらできると思うんですけ

ど、私は石井さんではないから石井さんのノリに合わせるのが難しいっていうか。弾き語

りみたいには歌えなくて、なかなか慣れられませんでした。


lete:わかってはいるんだけれども


武田:そうです。


lete:慣れに辿り着くのにはコツがあったのですか?


武田:いや、コツなかったです。練習するだけでした(笑)はい。


石井:この頃の方が(LIVE02JUL2005を指して)イメージが持ててたよね、多分。


武田:そう、それすごく気に入っていて。


石井:Johnny ClicheもSunday Afternoonも、この時には音楽的にはキーが半音低いか

ら、今より低い声で歌えているっていうのは単純にあるんだけど、でもそういうんじゃな

くて何だろうな、理解力がこの頃の方があったっつうか(笑)


武田:ふふふ(笑)


石井:結局パフォーマンスとして、例えばこのライブは(LIVE02JUL2005)偶然なのか

もしれないけど。


武田:あとね、その頃は結構どのライブも割と良かったんじゃないかな、って気がしま

す。新しいTICAに変わった時期で、事務所もなくなって、これから本当に自分達の好きな

事だけをやって行けるっていう、何か新しいものに向かってゆく希望とかワクワク感って

ものがあったんでしょうかね。


lete:そういう気持ちの影響は大きいですよね。


武田:大きかったと思います。精神的なものが結構大きかったんじゃないかと思います。


石井:でも確かにこの時期はそういうのあったよね。

lete:いい時期だったのですね。


武田:そうですね。


lete:次に7曲目に入っていますI Shot The Albatross ですが、こちらはカバー曲です

か?

石井:カバーです。


lete:曲を聴いて気に入られて?


石井:そうですね、すげえいい曲だなと思って。


lete:あまり有名なバンドじゃないですよね?


石井:全然有名なバンドじゃないみたいですね。


lete:どこでお知りになったのですか?

石井: CD屋さん。


lete:偶然?


石井:偶然ですね。たまたま店で展開してて視聴機に入ってたんですよ。グラスゴーのバ

ンドでアルバムは2枚しか出てないのかな?その2枚は一応買いましたけど、その後どう

してるかは分かんないですね。


lete:ああ、そうでしたか‥




Manuel Bienvenu から受けたこと




lete:ではアルバムに入ってる他のカバー曲について、まずThe Velvet Undergroundの

New York Telephone Conversationですが、ロマンティックな前曲Room105からの流れ

もあり、パッと明るく花が咲いたような印象でした。原曲を忘れる程ぴったり嵌ったアレ

ンジに感動しましたが、どのようにアレンジされたのですか?


石井:これもコンピに参加する為にTICAで一曲作ったもので、以前からこの曲をやってみ

たかったっていうのがあって。アレンジのアイデアは朧げながら昔からあった。


lete:マニュエルさんの影響はありましたか?何かあれば具体的に


石井:影響はあった。TICAとは別に二人でやってるグループがあって、それは二人でせー

のって一緒に曲を作っていくのですね。だから具体的な影響は、その際のやりとりから受

けたかな?あんまりそうやって作らないから、普通。


lete:お一人で作られる事が多い?


石井:でしょう。だってなかなか面倒臭いじゃないですか。人と一緒に作曲するっていう

のは。例えば、それぞれに俺はAのパートを家でつくってきたからお前Bのパート作ってこ

いよと。で二人合わせて開陳して、何かしらのマイナーチェンジやブリッジになるパート

などはその場で共同で作曲する、などの作業はあるのかもしれないけど、基本的には作

曲っていうのはさ


lete:ひとりで


石井:うん、でしょう。マニュの音楽の作り方や、構造としての音楽の捉え方などには影

響を受けました。


lete:New York Telephone Conversationの歌声が無垢な少女のようで新鮮ですが、その

辺りは


武田:あれはね、石井さんからのリクエストとしては、何かあんまり、、、。私ね、最初

歌った時に、面白おかしくっていうかちょっと気楽な感じで歌ったんですけど、そうじゃ

なくてもっと感情を入れないで歌ってって言われたんです。でもその気楽な感じがちょっ

と残った結果そうなったのかもしれない。マニュも一緒に、その後歌を歌うから、その役

割はマニュもやるから。私はベーシックな部分をきっちり歌うのが、いいんじゃないって

いう事だったんです。


石井:武田が歌入れする段階にはもうほとんどオケができてる訳だから、その中でこれは

こういう風になるべきというのが、もう見えてる訳ですよ。それで実際に武田が歌ってみ

て何か自分のイメージと違うかんじだったら言うっていう。


武田:でもあれね、2、3回くらいパッとやって終わりました。


lete:そんなに早く


武田:そんな感じでしたよ。




原曲を忘れる才能




lete:2000Miles ,Birthday ,Femme Fataleを歌っているクリッシー・ハインド、ビョー

ク、ニコはとてもアクの強い声で独特の歌い回しをする女性アーティストですが、カバー

しにくくはないのですか?


武田:全然やりにくくないです。それがやりにくくないんですよね、私。


lete:素人考えで言ってしまうと、印象に残って真似してしまうというか


武田:そう。それは最初は真似しちゃうんですよ、絶対。でもFamme Fataleはエブリシ

ング・バット・ザ・ガールのトレーシー・ソーンバージョンをやっぱ真似してます。いま

だにそうです。でも私彼女の事が大好きだし、彼女の歌は割とそうなりたいなって部分も

あるので、それはそれでいいと思っていて。


lete:インスパイアというか


武田:そうですね、で他の曲はライブで演奏しているうちに元々のバージョンっていうも

のを忘れちゃって(笑)ずーっと歌っているうちにそんなに意識せずとも、自然に忘れて

行って。だからやり難い事はないですね。


lete:それは本当に才能だと思います。


武田:いや、考えすぎないから(笑)こうなっちゃうっていうか。


lete:それは訓練してできるようになったのですか?


武田:最初からだと思います。それは。


lete:高音やサビでつい高らかに歌いたくなったりはしないのですか?


武田:あ、します。


lete:そういう時、どうされるんですか?


武田:ライブでそうしてます。レコーディングの時は、高らかに歌うよりは割と抑えて歌

う方が好きなので。でもライブの時って抑えられなくなる時があるので、そういう時はも

う歌っちゃいます。


lete:自分で聴いて好みだなと思うのは、抑えた方なんですか。


武田:うん。やっぱり曲に合ってるなって思うのはそうですね。あまりやりすぎない方が

好みです。


lete:それは石井さんも同じでしょうか?


石井:うーん。それがちょっと変わってきたんですかね。そもそも「抑えめ」とか「高ら

か」っていう発想では考えたことがないですけど。最近は「高らか」というか歌いあげる

方がいいんじゃないって気がする。だからキーが半音上がったりとか。


lete:気が付かれていました?


武田:高らかな方がいいっていうのは気付いてないです。キーは勿論気付いてました。




*後編へ続く




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あき 2010.05.25 21:29 | TICA インタビュー | 更新情報をチェックする